髪の毛をくしゃっと大きな手で撫でられた。優しい手触りが涙腺に触れる。
「また明日にしよう」
「うん。明日頑張る」みんな頑張ってるのにゴメン。絶対勝つ!という強い気持ちが大切なのに、まだ迷ってる自分がいるんだね。ポンコツのダメダメなヤツ!
 私も明日頑張るから、今日はちょっとだけ落ち込ませて下さい。

 夜になり、フカフカベッドに入っても寝付けない。いつも疲れて熟睡できるんだけど、今夜はなぜか眠れない。天井から下がるシフォンの布が揺れていた。見えないクーラーが回ってるのかな。お部屋の温度はいつも最適。優雅な天蓋付お姫様ベッドも、今夜は病院のベッド気分で憂鬱になってしまう。
 気の持ちようだな。ベッドから降りてカーテンのように布を引き、視界を良好にして枕元のリモコンを手にして、ロウソクの灯りをさっきより明るく調節する。

 窓から大きな丸い月が見えていた。
 夜の散歩なのか、ドラゴンたちが月の灯りを頼りに空を舞う。どこのドラゴンかな?綺麗な動きをしているから大人ドラゴンだな。隣の国から遊びに来たのかな。いつの日かフレンドも彼氏を見つけて、ツーショットで月夜の散歩とかするのだろうか。素敵な女の子になってほしい。あれ?女の子って変?いや……いいのか?女ドラゴンって言い方は勇ましいし……よくわからない。考えるのが面倒でそのままゴロリと横になる。

 何も考えたくない。静かな夜は嫌い。テレビがこんなにも恋しくて泣きたくなってしまう。きっとそれは月が綺麗すぎるからだろう。 強くなりたいのに強くなれない。剣も心もこのままではダメだ。負けてしまう。実力もないのに焦ってばかりだ。そんな事を考えながらテーブルの上にあるガラスのランプを見ていたら、灯りが消えた。故障した?

 すると
 部屋の中も徐々にゆっくり暗くなり部屋も揺れる。どうしたの?何かあった?
 ソファから起き上がろうとしたけれど、身体が動かない
 うわぁどうしよう!金縛りだ。