顔が赤くなる。ドキドキしてるし、ときめいてる。
 もしかしたら、いやきっと、私はリアムに惚れているのかもしれない。キスでだまされちゃいけないよ。俺様ドSな男はタイプじゃないでしょう。どっちかといえば、アレックスみたいな優しさのカタマリというのか、あんなにキラキラしなくてもいいけど、優しくて思いやりがあって気が利いて、イケメン金持ち権力者なんて理想でしょう。ベッドに誘われたらありがたく付いて行ってもいいレベルなのに、私はアレックスには惹かれなかった。リアムなんて嫌いなタイプだけど……恋って理屈じゃないんだよね。

 でも私の気持ちは知られてはいけない。アレックスとフレンドの命がかかっている、国の一大事が迫ってるのに彼の気を散らしてはいけない。騎士団長の使命はアレックスを助ける事。自分の命に代えても助ける事。私なんて二の次だから。いや、寂しく思ってどーする。別世界の男に惚れてどーするの私。気が散るとダンスも乱れる。魔法の靴も集中力が必要なのかな。ついリアムのブーツを蹴ってしまう。
「ごめんなさい」
「いや」
 そして沈黙で会話がない。キスされたけど幻だったのかしら?嫌われてるのかな私。無能なのに、仕事増やしてばかりだもの。好かれなくてもいいから、嫌われたくないなって、めちゃくちゃ弱気になってる私だった。

 ワルツが終わって、やっと彼は私を見てくれた。
「仕事に戻る」
「うん。踊ってくれてありがとう」
「リナ」
「はい」
「……綺麗だ」
 リアムは消えそうな声でそう言って、真っ赤になって私の前から去って行く。
 ただのツンデレだったのか。私も彼以上に顔を赤くしてしまう。そっと振り返り、リアムの後姿を見送る。緩やかにまとめた長い髪が男の色気を漂わせる。背が高くて姿勢が良くて顔も良い。だから目立つし、淑女のみなさんも彼に注目する。魅力的な人。アレックスが太陽ならば月のような人。色んな意味で遠い人。
 せっかくのお祝いの席でマイナス思考はいけない。今日はアレックスの誕生日だ、そちらに集中しよう。今夜一晩
転ばないように頑張ろう。