大きな大きなホール。こんな大きな場所あったっけ?なんでもアリのアレックスだから、魔法で作ったのかしら?ホールの半分にテーブルが並んでビュッフエ形式にごちそうが並び、半分はテーブルも何もなく人が散らばっている。きっとあそこでダンスを踊るのだろう。

 正面にステージがあり、そこの中央のゴージャスなイスに、黒に近い緑の王族風衣装を着たアレックスが座っていた。ゲストが列を作ってアレックスに挨拶をしている。
「私達も並びましょう」
 はしゃぐシルフィンに引っ張られて列に並び、人の多さと慣れない服装でドキドキしながら順番を待ち、私達の番になってアレックスの足元で頭を下げる。
「王様にはご機嫌もうるわしく、お誕生日を心からお祝いいたします」
 シルフィンはそう言って可愛らしく礼をする。
 次は私の番だね緊張しちゃう。知ったかぶりで間違った言葉づかいをしても恥ずかしいので、普通に心を込めてのご挨拶しよう
「お誕生日おめでとうございます。優しい王様とこの国の幸せが続きますように」そう言って顔を上げると「ほう……これはこれは……」アレックスは驚いた顔をして、パチンと指を鳴らすと音楽が鳴り出した。三拍子のワルツ。
「踊っていただけますか?」
 アレックスは玉座から飛び出して、有無を言わせず私の手を取り腰を抱く。
 お城の舞踏会でダンスなんて、夢の世界。

 生演奏に合わせて、私とアレックスは中央で踊り、私達の周りもダンスの輪が広がる。社交ダンスなんて踊れないはずなのに、踊れるのはなぜだろうと思っていたら、シルフィンと目が合った。シルフィンは私の靴に向かって、クルクルと指を回していた。私の靴に魔法をかけてくれたんだ、なるほど納得ありがとう。安心してアレックスと踊っていたら「見違えた」って接近して耳元で言われた。
 そして「誰よりも綺麗だ」と急接近する。接近しすぎ!ゴージャスなイヤリングで耳の甘噛みを防ぐ。

「アレックスも素敵だよ」
「ありがとう」どんな女子でも落とせる笑顔が危険です。
「お誕生日おめでとう」
「ありがとう」
「プレゼントを用意できなくてごめんなさい」
 どこかでこっそりバイトして、何か用意したい気分だった。
「リナが私の前にいる。それがプレゼントだよ」甘い声でアレックスはそう言った。
 油断ならないたらしだった。