目の前が湯気でもやっとする。
　滝のシャワールームというのだろうか、部屋のバスルームを大きくした場所に移動して、どこからか現れた数名のメイドさん達に私は手早く服を脱がされた。
「時間がありません」シルフィンの言葉が響き、私は身体を磨かれてから、そのままベッドに倒されて全身マッサージを受ける。エステルーム？高級ホテルで嗅いだことのある香りのオイルが身体に塗られ、すんごく気持ちいい。ほぐれるー。両手両足の爪を磨かれ、ヘッドスパされ、丁寧にヘアメイクをされたら……本当だもう夕陽が見える時間になっている。磨いていると時間って足りないものなのね。
　そして初めての縦ロールお姫様ウィッグを着ける。髪には宝石ではなく綺麗なバラが飾られていた。そして魔法のメイクのせいなのか……誰これ感があふれてる。大きな全身鏡の前に立たされてジッと自分を見ていたら、シルフィンが現れた。
「リナ様。なんて美しい」
「いやそこまでじゃないけど……確かに自分じゃないみたい」
「仕上げを私がいたします。王様の瞳の色と同じ、エメラルドグリーンのドレスにいたします」
　シルフィンが大きく手を上げて、気合を入れて呪文を唱えて私にパワーのような軽い衝撃を与えると
　鏡の中でエメラルドグリーンのドレスを着た、品のある美しいお姫様が立っていた。

　ウィッグはダークブロンド。金と茶色の中間色。明るいきらびやかな茶髪って雰囲気ある。綺麗に腰までのゆるい縦ロール風のウェイブが波打っていた。艶があって高級シャンプーのモデルさんみたい。飾られたピンクのバラが本当に可憐だった。
　ドレスは鮮やかなエメラルドグリーン。本当だアレックスの瞳の色だね。高級感があって胸元のアンティークレースと裾に広がる金の刺繍がゴージャスだ。首には美術館で見るようなシャンデリアっぽいネックレス。
　そして顔は原型は私なんだけど、頬は薔薇色で目はぱっちり、唇プルプルで苺のようでヘアメイク半端ないわ。