舞踏会当日。
 朝からお客様がいっぱい来て、みんな対応に大忙し。お手伝いしようとしても、魔法も使えない私は邪魔になるので、いつも通りにフレンドの部屋で一緒に過ごす。遠くから来るお客さんはドラゴンに乗って来る確率が多いので、部屋からその様子を見るだけで楽しい。
「あのドラゴンはイケメンだね」細身で背の高い……いや、長い?ドラゴンを見てそう言うと、フレンドは首を横に振る。どうも男性のタイプは私とは違うらしい。ケンカにならなくていいか。フレンドの理想はアレックスだから、品があって派手でキラキラしてるのがタイプなのかな。

「今日はお空の散歩はできないね」
 交通渋滞だから外に出るのは危ないかも。
 私はよそ者で場違いだから、夜にちょっとアレックスにお祝いを言って、あとはここで過ごさせてもらおうかな。そんな事を思っていたら「リナ様!」と大きな声で私の名前を呼びながらシルフィンが入って来た。
「どうしたのシルフィン?」

 もうお昼?今日はみんな忙しいから、お昼は厨房から勝手にパンをもらってきたよ。
「夕方から舞踏会が始まります」
「はい知ってます」
「ご準備を」
「私はいいの。アレックスが落ちついたらクローゼットからドレスを選んで、こっそりお祝いに行くから大丈夫」
「女性の準備は半日かかります!何をのん気にしているのですか。フレンド、レイナが到着したから待っててね」
「レイナって誰?」
「東のふもとから来たフレンドのお友達です。ここで一緒に遊ばせるのでここは大丈夫です。あちらに任せましょう。さぁリナ様!」
 シルフィンは小さな身体で私をがっちりつかんで得意の瞬間移動する。だから歩こうよ。