「妃など必要ない」
「王様にはお妃様がセットですよ」
「妃を選んでも、私は死にゆく身」
「アレックス」
「夫に先立たれた妃が気の毒だ。残された者の気持ちが一番わかるのが私だからね」
 子供を諭すようにアレックスは私に優しく言う。

「フレンドが戻って来るね。リナもそろそろ戻ろうか?私もリアムと話をしよう。騎士団長にとって舞踏会はきらびやかな楽しい夜ではなく、警備が忙しい嫌な一日だから。きっとその打ち合わせだろう」
 心の中がモヤモヤする。アレックスの考えは何か違う。
「アレックス。それを言うなら、アレックスを失って残された人達がどんな気持ちがわかるでしょう?」
 偉大なる王様に失礼な発言をする私だった。王様に意見するなんて、ネズミに変えられても文句言えないレベルかもしれない。真剣に言う私の髪を、アレックスは愛しそうに撫でる。男らしいリアムとは正反対イメージで、癒し系イケメンさん。

「リナを妃に迎えようかな」
「えっ?」どんな展開?私が妃?
「もう一度キスしてもいいかい?」唇を寄せてきたので、指をそろえて顔の前で壁を作った。この24時間でアレックスと何度もキスしている気がする。
「王様?」
「何だい?」
「首にキスマークついてます」
「ん?」苦笑いしてるけど、私と会う前に遊んできたのはバレております。タラシめ。

「フレンドが呼んでるよ」
 アレックスの笑い声を聞きながら、私だけまた瞬間移動が始まった。
 お願いだから
 歩かせてーーーー!!!