「リアムや周りの者たちはそれを回避しようと一生懸命だが、私とドラゴンが犠牲になればこの国は助かる。簡単な事だろう」
「それは違います」アレックスの腕の中で必死で訴える私。
 ちがうよ
 それは違う。誰も犠牲になってはいけない。あきらめちゃダメ。
「でもね、とある占い師がこう言った。『海から救世主となる女性が現れる』とね……気晴らしに言った言葉だと思うがリアムはそれを信じ、時間を見つけて毎日海へと出かける」
「だから私と思ったんだ」小さくそんな声が出てしまう。
 期待して期待して現れたのがポンコツの魔法も使えない私だったから、リアムはガッカリして機嫌が悪かったのかもしれない。知らないで私も態度を悪くしてしまった。反省しなきゃ。
「そうだね。でも私はリナを巻き込みたくない。リアムには指輪の話をしないでもらいたい。リナを危険な目に会わせたくないからね」
「アレックス」
 優し過ぎるよアレックス。そして、あきらめが早すぎるよ王様。
 
 アレックスの腕の中で涙を流していると
「王さ……リナ」凛々しい軍服姿のリアムが現れ、アレックスの腕の中にいる私を見て驚いていた。
 あ、勘違いされたかもしれない。
 アレックスはリアムの顔を見て自分の腕に力を入れ、グイッと私を引き寄せて、頬が重なるくらいに密着させる。えっ?ちょっとちょっと!恥ずかしいでしょう。
「何か用か?」
「いえ、急がないのでまた」と言い、私達から目をそらしてすぐその場を去って行った。
 完全に誤解したかも……いや誤解されても別にいいんだけど、なぜか追いかけて『誤解だよ』って言いたくなる。
 どうした私?

「久し振りに楽しいな」
 アレックスがまたツボに入ったのか笑いが止まらなくなり、私はその隙に彼の腕から無事離れた。まったく……何が楽しいのかわからない。アレックスの笑いに私の涙も止まってしまう。
「きっと来月の舞踏会の話だろう」
「舞踏会?」
 これぞ王道ファンタジー。お城で舞踏会なんて童話の世界だ。
「そう、舞踏会」アレックスは私の腕を取って優雅にお辞儀をする。
「やらなくてもいいのだが、私の誕生日の祝いだ。山のふもとの領主たちが美しい娘たちを連れて城にやって来る」
「お妃さま候補とか?」
 聞いていてワクワクするリアルシンデレラだ。きらびやかな世界をこっそり覗きたい。