これが救世主?
 あの魔王を破壊できる力を持ち、我が国を救える最強の救世主なのか?
 何か嫌な予感をさせながらリアムは馬から降り、剣を片手から離さずように、横たわる女を観察した。

 生きてはいる。手とまつ毛が微かに動いた。
 髪は少年のように肩までしかない。顔は小さく身体も小さい。救世主は子供かもしれない。
 服装も変だった。白いブラウスの上には舞踏会で上着の下に着る胸当てのような物を着ているが豪華さはない。金糸も銀糸も使ってはいない。その上にグレーの柔らかい上着を着ていた。勲章も宝石もない。下は短いスカートだが……こんな短いものを見たことはない。町の女性たちも娼婦以外は足を見せてはいないから……娼婦か?いや、下着だろう。
 
 横たわる女を見て、リアムは想像していた救世主とのギャップにためらっていた。
 しかし、あれほど待ち続けた救世主。リアムは女に声をかけ、身体を揺すり目を開けさせた。
 女は頭をふらつかせながら横たわる身体を起こし、リアムを見て「ひっ!」と声を出した。
 【ひっ?】第一声が【ひっ?】だって?反射的にムッとした顔になったが、リアムは騎士だった。沈みかかる夕日を背にして丁寧に膝を着き、女に頭を下げて敬意を見せた。