「ギャー!!」とお腹の底から大きな悲鳴を上げると、私よりもっと驚いたドラゴンが高く怯えた声を上げて、シュルシュルと凄い勢いで、また部屋の隅っこに逃げて行ってしまった。
「リナ。驚かせてはいけないよ」
「だって……ドラゴン。ドラゴンでしょう?」
 ドラゴンだよね。心臓がバクバク鳴ってる。空想上の生き物のドラゴンだよね。絵本や映画で見るようなドラゴンだよね。胸を押さえながら、自分を落ち着かせる。そして、目をこらして奥を見ると……頭隠してお尻隠さず、ドラゴンは背中を丸めて肩を震わせている。

 ごめん
 魔法もなんでもアリだから、ドラゴンもアリだよね。まだ子供なんだよね、驚かせてごめんなさい。申し訳ないっ!
「おいでフレンド。新しい友達を紹介しよう」
「フレンドごめんなさい。私はドラゴンを見るのを初めてなの。だから驚いて大きな声を出してしまって、ごめんなさい!本当にごめんなさい」
 低姿勢で必死で謝ると、私の気持ちが通じたのか、ドラゴンの肩の震えがピタリと止まる。

「おいでフレンド、可愛い私のドラゴン」
 甘い甘い声でアレックスはフレンドを呼ぶ。その顔と声が甘すぎてたまらない。クラクラしそう。
「さぁおいで」アレックスの押しの一言に、フレンドはお腹をクネクネさせて、涙目で私の方にゆっくりやって来た。

 初めて見るドラゴン。
 大きさは電車二両分くらいかな。ドラゴンの部屋なら大きいのも理解できる。身体の色は深い緑。お腹の色は薄い黄緑だ。よくゲームに出てくる恐竜に羽の生えたようなドラゴンじゃなくて、中国の龍の方に近いと思う。
 手と足はあるけれどお腹でクネクネする方が移動が速そう。ウロコがキラキラ綺麗で広げてないけど羽らしきものもある。鋭い爪とフサフサな緑のたてがみ、キリンみたいな角もあるんだ。おひげがないから子供なのかな。