ジャックはノリのいい後輩に似ていた。ポジティブで明るくて頭の回転も速くて、会話がポンポン弾み帰り道は笑ってばかりだった。
「ジャックは馬より飛んで来た方が速かったとか?」
「馬に乗りたいんですよ僕が」
「鳥なのに?」
「いじわるだなぁリナ様は」
 爽やか鳥青年と楽しく時間を過ごしていたら城門に到着して、そこに凛々しく真っ黒い軍服を着た騎士が立っていた。
「リアム様」
 ジャックは慌てて緩んでいた表情を戻し、馬から降りて私の身体も降ろしてくれた。
「楽しそうだな」
 リアムもデキのいい魔法使いというから、千里眼で全部覗かれてたかもしれないね。悪い事はしていないけど、端整な頬がヒクヒクしている様子を見たら、なーんかヤバい気持ちになってくる。イラつき気味のリアムはジャックに「第一部隊と合流して街の見回りに行け」と早口で言い、ジャックは背筋を伸ばして「はい!」と返事をしてダッシュで行ってしまった。さっきまで声を上げて笑って楽しく過ごしていたのに、急に断ち切られた気分になる。残念だ。この世界で私はお荷物で、お世話になる立場だからしょうがない。突然こんなのが現れたらみんなの仕事も増えるよね。ごめんなさい。

 リアムは城門を魔法で開き歩き出すので、私も後ろを小さくなって歩いていると
「ジャックには笑うんだな」ってボソリと言った。
 はい?何それ?意味不明な一言ですよ騎士団長様。
「ジャックには楽しそうに笑うんだな。俺にはそんな顔は見せないだろう」
急に後ろを振り返りムッとして言われたので、こっちも反射的にムッとなる。
「私とリアムは、出会ってから楽しい会話してました?」
「笑顔くらい見せてもいいだろう」
「そっちだって、いつも怒った顔ばかりしてるでしょう。笑って欲しかったら自分から笑いなさいよ」
「俺は元からこんな顔なんだ!」
「私だって元からこんな顔です!」
「やっぱり可愛くない女だ!」と、ボソッと言われたので、私も頭に血が上ってしまう。
「上等ですね騎士団長様!いくらみんなに尊敬されても、私はあなたみたいな、ドSでスネた男は大嫌い」
「好かれたいとは思ってない!」
「こっちだって」
 売り言葉に買い言葉。大きな声を出して言い合ってると、きらびやかにアレックスが目の前に魔法で登場した。