パン屋のおばさんからお礼にもらった焼きたてパンを食べながら、再びシルフィンと歩き出す。
「子供達は学校に行くの?」
「そうです。15になるまで学校へ行き、それ以降の5年間は専門職に就く者や、学問を続けたい者たちが上の学校へ進み、他の子達は親の職業を継ぐのが多いです」
「魔法も教えるの?」
「はい。基本の魔法を身に付けます」
「お勉強って国語とか算数?」
「こくごは国の言葉ですよね。あと古代の言葉も教えられます。国の歴史と星見表の使い方と数式などですね」
 あちらの世界と、基本的には変わらないのかな。
「男の子は剣術も習います。剣を上達させて、将来の夢は騎士団に入る事です」
 そう言われてパンを喉に詰まらせた。
「騎士団?騎士団ってリアムがいるとこ?」
「はい。騎士団長のリアム様は誰からも尊敬されてます。勇気があって強くて剣の腕はこの国で一番です」嬉しそうにシルフィンはそう言った。
 そうなの?あのドSで短気な男がねぇ。でも、優しい所もあったかも。泣かす気はなかった……みたいな事を言ってくれたし、素直な人なのかな?剣の練習で見せていた笑顔も可愛かった。あれ?違う違う。あんな男はタイプじゃない!話を変えてあのドS男を頭から追い払おう。

「でもね。みんな魔法を使えるなら働かなくてもいいんじゃない?」ついそんな疑問を口にする。
 だって、何でも出せるし不自由ないでしょう。不思議そうに聞く私にシルフィンは首を横に振った。
「全て完璧に使えるのは王様だけなのです。王様に不可能はありませんが、私達はそこまでできません」
「そうなの?だってシルフィンは何でもできるよ」
「私は、人より少し使えるので城に置いてもらってます。その地位によって魔法の種類も変わるのです。王様を守る仕事に関わる人たちは、魔法の腕も高くなければいけません。でも普通の人達は、最低の危機管理能力と自分の仕事に使う事だけ魔法で使えます」
「たとえば?」
「そうですね。たとえば子供達はほとんど使えません。学校で物を移動する魔法と、悪霊に捕えられた時の危機回避魔法を学びます。急に現れてもバリアが使えたり、自分の意識を隠して物と一体化させたり、高度ですが自分が瞬間移動できるようにです」
「なるほど」
 悪いものに襲われないようにが基本だ。