「食事が終わったら散歩でもどうかな?」王様がそう言うとシルフィンの顔が輝く。
「王様。街のご案内もお願いできますでしょうか?今日はお天気もいいのでドラゴンの背に乗れば、街も葡萄畑も綺麗に見れます」
「それなら、僕が先頭になってご案内しましょう」
「そうだね。公務は後にして皆でリナを案内しよう」
 おもてなし計画をワイワイ話してくれるのが嬉しくて、つい幸せ感じていたら背中から冷たい空気が流れてきた。

「お前たちまで浮かれてどうする!このまま城に居座るなら働けっ!」
 春の日差しのようなぽかぽかムードを、リアムの声が雷のように真っ二つにする。怖くて王様でさえも突っ込めないという。
「食べたか?」
「はい」
「移動する。王も来て下さい」
 私は軽々とリアムに荷物のようにかつがれ、強制的に食堂から退場する。

「シルフィ―――ン」
 自分より年下の女の子にすがったけれど、シルフィンは「がんばってくださーい」って苦笑いで手を小さく振ってくれた。頑張る自信がないよーーー!
 狩られた獲物のようにリアムの肩に揺られ、連れて行かれた部屋は小さな部屋。装飾品もなくシンプルな部屋で丸いテーブルとイスが3つあった。取調室か?「座れ」と言われて降ろされて、ストンとイスに座ると私の真向かいにリアムが腕を組んで座る。ジッと見つめ合う私と騎士団長。ブラウンとグリーンが混ざったヘーゼルの瞳に吸い込まれそう。こんな状況だけどつい見惚れていたら、プイとあっちから目線を外した。

 そんなに嫌わなくてもいいじゃないの。少し寂しくなってしまう。
「お茶でも飲もうか?」
 いつの間にか現れた王様が銀のティーセットを魔法で出し、細い口金から誰の手も借りず自力でティーポットはカップに紅茶を注ぎ始める。「わぁ」と、喜んで目の前のイリュージョンを見ていると王様は「お疲れだね。砂糖も入れようか」と、今度は可愛らしい角砂糖が銀の皿から踊り出し、勝手に目の前のカップに飛び込んだ。
 思わず拍手をして、笑顔の王様と喜んでいると「王は邪魔しないで下さい!」リアムの声がまた響く。
 ゆとりのないヤツだ。