「こちらでございます」
 シルフィンが扉を開けると、もう王様は長ーいテーブルの一番奥に座っていた。
「おはようリナ」
「おはようございます王様」
「ゆっくり休めたかな?」
「はい。ありがとうございます」目が覚めたら現実に戻ってなくて悲しみのドツボでしたが、滝のシャワーで元気になりました。
「一緒に食べよう」
「はい」そう言いながら、私は王様と反対側の一番端に座った。王様遠いっ!声がギリ聞こえるぐらいだわ。でも今日もキラキラ輝いているよイケメン王様オーラ。
 食卓テーブルに着くのは私と王様だけ。リアムもシルフィンも他のメイドさんも数名いるけれど、2人とも座らず見守るように立っていた。食べずらーい。これが身分差なのか、何の能力もない私こそ立ってなきゃいけない気がするけれど。

「リアム、マントをありがとう」
 こっそり壁に立つリアムにマントを渡すと、返事もせずに受け取った。返事ぐらいしろよ。さっき笑顔が可愛いって思ったのを取り消してやる。
「ワインは白もあるから」王様の方が細かく気を使って声をかけてくれる。申し訳ないです。
 食事はパンがフワフワでパンプキンのスープが絶妙に美味しく、朝から伊勢海老っぽいのを食べて贅沢気分を味わう。食堂の窓から朝日が射し、鳥の声が聴こえる。
 昨日までの朝といえば、私はパンをかじりながらコーヒーを飲み、耳はテレビで目線はスマホで、友達のインスタに朝からイイね!を押しながら時間と闘っていた。
 贅沢な朝だ。
 食後のコーヒーではなくワインのおかわりをいただいてると、高い場所にある小さな窓から大きな鷹が室内に飛び込んできた。驚いて席を立つと「驚かせてすいません」と、鷹は昨日会った爽やかジャニ系青年に目の前で変化した。
「国境の周りは変わりありませんでした」
 背筋を伸ばして青年はリアムに報告をしてから、王様に頭を下げてシルフィンの隣に移動する。
 その時こっそり「昨夜は寝れましたか?」って聞いてくれたので「うん。ありがとう」と返事をした。
 
 優しいのね……誰かさん以外は。