「私は宮本里奈と言います。よろしくお願いします」
 丁寧に頭を下げられたので、私も頭を下げてると「後は頼む」そう言って振り向きもせず、いじわるな男は去ってしまった。
 もう行くの?ちょーっと不安なんですけどっ!
 目で追いすがる私をシルフィンちゃんはニコニコ笑顔で見ていた。はっ!なんか大人としての威厳もないよね。こんな年下の女の子にうろたえた姿を見せてしまった。恥ずかしい。

「リナ様とお呼びしてよろしいですか?私はシルフィンとお呼び下さい」
 シルフィンはミニドレスの裾をちょこっと持って、可愛らしくお辞儀をした。
 可愛いわ。萌える。
「様はいらないです。リナでいいですよ」そう言うと、女の子はブンブンと首を横に振った。
「お客様に呼び捨てはできません。まずはいかがしましょうか?夕食は食べましたか?」
 夕食。その言葉だけでお腹が鳴る。
「めちゃくちゃお腹空きました」素直に言うと気の毒そうな顔をして、彼女は大きなテーブルに近寄りサーッと小さな腕を振ると、テーブルの上に果物とパンとサラダと鳥の丸焼きが並んだ。
 これが魔法なのか!
「今日は私の魔法で申し訳ありません。明日の朝からは料理長の美味しい食事を口にできると思います」
 本当に申し訳なさそうに言われてしまった。
「これで十分完璧です。ありがとう」
 本気でお礼を言ってテーブルに着いてパンを一口食べると……美味しい。こんなフワフワしたパン久しぶりだ。お腹空いてたから泣きそう。
「リナ様はお優しいですね。ゆっくりお食べ下さい」
 シルフィンは安心した声を出して手を使わずにワインを注ぎ、鳥の丸焼きを取り分けてくれた。魔法って便利ね。
 私は食事をしながらこの世界の事をシルフィンからお勉強。キラキラなタラシの国王とドSな騎士より、よっぽどまともで頼りになりそうだよシルフィンちゃん。

 彼女は気付けば海辺で倒れていた状況の私の話を聞き、気の毒に思ってくれた。
「では、この国のことも何もわからず、魔法も使えないのですね」
「はい」私の返事は一言で全て完結です。