「では」
 クルリと振り返って部屋を出ようとする男の手を、私は必死で掴んだ。
「なんだ?俺は忙しい」
「あの……お腹空いたし、食事とかお風呂とかあればご案内を……」
「自分の魔法でなんとかしろ」
 冷たい一言を残してまた部屋を出ようとするので、再び腕を引っ張ると、男はめんどくさそうな顔をする。
「魔法なんて使えない」必死に訴える私だ。
「お前本当に使えないのか?」本気で驚いた顔をして、男は私をジッと見る。
 憎たらしいけどやっぱイケメン。男らしく端整な顔がセクシーだ。
「わかった。ちょっと待て」
 男はあきらめたようにそう言って「シルフィン!」と大きく叫んだ。すると「はい。リアム様」と……いきなり女の子が目の前に現れて膝を着く。
 どっ……どこから来たの?壁?壁から抜けてきた?見逃したからもう一度やってほしい。
 いきなり登場した女の子は……超絶可愛い女の子だった。
 それこそアイドルグループのセンターにいても大丈夫くらいのルックスとスタイルで、顔は小さく目は丸く唇はサクランボのように赤くプルンとしていて愛らしい。髪は真っ黒のツインテール。洋服はゴズロリ系のミニワンピ。胸元を革の紐でキュッと絞ってからのふんわりペチコートが目立つ、お姫様膝上ワンピがとってもお似合い。足が細っ!エナメルの黒い靴がピカピカしてる。

「魔法も使えない行き倒れだ。世話をしろ」男は冷たくそう言うが、女の子は笑顔で私に優しく挨拶をする。
「お客様ですね、久し振りのお客様で嬉しいです。初めまして、私はシルフィンと申します」
 高校生か中学生くらいだろうか、細身で私より背が低いけど弱い感じはしない。
 可愛いけど凛としていて見惚れてしまった。