「自分の家に帰れるまで、私の城でゆっくり過ごしなさい」
「王様」
「私の名前はアレックス。リナの話はよくわからない部分もあるが、聞いていてとても楽しい。今日は疲れたろう。また、明日ゆっくり話をしよう」
 王様は癒し感あふれる顔と言葉でそう言って、私の涙である真珠を、ベストのポケットに入れてくれた。

「心配しないで、大丈夫だよ」
「あじがとうござびます(ありがとうございます)」
 地獄で仏ってこれか。リアルことわざ辞典を実感しました。

 泣きながら感謝していると、グイッと身体を引かれて私の身体は王様の腕に入り、強い力で抱かれてからの、顔が迫って来て唇を重ねていきなりのキス。
 初対面で王様にキス。あまりの素早さと驚きで反抗もできなかった。そして王様は耳元で「本当の話はまたゆっくりと」と囁く。本当の話って……バレてる?ヤバい!全部バレてる?
 サーッと血の気が引いた気分になってたら、王様はふわりとまた微笑み私に背を向け「大司教を待たせているので失礼する」と、部屋を出て行ってしまった。

 残されたのは、私と乱暴な怖い男。
「王は……女好きだ」
「はい?」
「気をつけろ」
 笑顔もなく、そう言われ言葉が出ない私だった。確かに、あの唇を奪うスピードと癒し系の顔はタラシかもしれません。