「ただいま戻りました王様」
 男はそう言って片膝を着いたので、押さえ込まれた私の身体も同じ体制になってしまった。

 王様?
 今度は王様登場?
 怖い人ならどうしよう。すぐ殺されるかも。こんな知らない国で殺されるのは嫌だよ。早く夢から覚めてちょうだい!半泣きで唇突き出して床を見ていたら、目の前に人影が現れたので顔を上げると

 王様降臨。
 王様の印象はキラッキラ。
 とにかくキラキラ輝いている王様だった。

 背が高くて超イケメン。これぞ王!きんぐおぶきんぐ。やっぱりお城がディズニーなら、王様もディズニー仕様なのだろうか。
 黄金の髪は長く輝いている。緑の瞳は優しくて、口元はひきしまり鼻筋は通っているし、私を連れてきた怖い男もイケメンだけど、こっちは甘い甘いイケメンさん。なんて美しくまぶしいんだろう。 
 マントは羽織ってないけれど、白くゆったりとした袖のドレープも美しいシルクのブラウスの上に、金の細かい刺繍が入った深い緑のベストを着ていた。品があるなぁ。

「ジャックから話は聞いている。御苦労だった」声が優しい。隣の男が乱暴なせいか、王様の優しい声が心に響く。癒し系だな王様。
「顔を上げよ」
 王様は私の前に座りスッと手を出して私のアゴをクイッと上げる。近くで見ると王様オーラに圧倒されそう。

「リアム」
「はっ!」
「私の夜伽相手か?」
 夜伽?よとぎって……夜の身体のお相手?いやいやいやいや、いくらイケメンでも初対面の人と寝れません。
「救世主様と思えば、ただの行き倒れでした。そうぞ王の意のままに」
「うむ。好きにしていいのだな」
「御意」
 そんな会話を目の前にして、恐怖で身体が震えてしまう私の頬を、王は優しく触れる。

「冗談だよ。怖い目にあったのだろうかわいそうに。リアムは乱暴だからね」
 急にくだけて優しい口調になり、吸い込まれそうなエメラルドの瞳で私を見つめた。
 王様……いい人。隣の怖い男より、上から目線のユニコーンより、きっといい人と信じたい。