白い馬が遠くから現れ、鳥青年は軽々とそれに乗る。
「お前は馬より飛ぶ方が速いだろ」
「僕が乗りたいんだから放っておいて下さい。先に行きますね、お嬢さん後からまたお会いましょう」
 爽やか青年はそう言って立ち去るので、見捨てられた仔犬気分で心細く見送ってたら、男に冷たく「乗れ」って言われた。

 乗れ?乗れって馬に?馬なんて小学校の遠足で牧場見学へ行って見たっきり。乗った事なんてないんですけど。
 それでも男の目線が怖くて挑戦してみるけれど、馬の背中って高くない?どうすりゃいいの?きっとこの、馬の口元に結ばれている革の紐みたいなのを引っ張って勢いをつけて……ウロウロしてると自分の身体がふわりと浮きあがった。

 見かねた男が私の身体を軽々と持ち上げ、上手に横座りで乗せてくれた。
「馬にも乗れないのか」
「すいません」怒られて謝る私。なんで怒られなきゃいけないんだろう。普通乗れないでしょう。

 男は慣れた手つきで馬の手綱を取り、私の後ろにまたがった。そして乱暴に自分のマントを外し、私の身体にかけてくれた。意外と優しい?ツンデレ系?
「女が下着姿で恥ずかしい」
「下着じゃありません」しっかり事務服着てますよ。
「行くぞ!」
 人の話を聞かない男は馬の横腹を蹴り、私の身体は衝撃を受けてしまう。落馬しそうになるのを必死でこらえ早く悪い夢から覚めるように願うしかなかった。