花嫁の手を取り
 式場である大広間に行く間に王は考える。
 あれから三年以上は過ぎた。自分ルールであちらの世界には行ってない。気ままな王としてはかなり我慢していた。

 でも
 そろそろその我慢も限界で、異世界のカレーが食べたくなってきた。こちらにその味を広めてもやっぱり本場の味を完璧に再現するとなると、なかなか難しい。

 そろそろ
 いいんじゃないかな?フレンドに見つからないように、騎士団達に見つかっても面倒だ。ひとりでこっそり出かけて、懐かしい親友に会って沢山話をして一緒に飲みたい。

 愛する人には……それは止めようか、彼女には会わないで影から一瞬見るだけならいいかな。そのうち『阿連 玖須です』と挨拶できる日も来るだろう。初めましてと挨拶すればいい。王はそう考えると急に元気になり、心も弾んでしまう。
 すると隣で花嫁が一言。共犯者の笑みを浮かべて王に言う。
 「私もこっそり連れて行って下さい、支配人」と……。全て彼女にはお見通しである。


 大広間の扉の前で花嫁と王は腕を組み、ニヤリと笑った。








  【完】