「シルフィンは私にとって大切な妹だから、幸せになって欲しい。ジャックとケンカした時はいつでも別れて帰っておいで」
 縁起でもない事をしれっと言う王だった。シルフィンは微笑み、王が手に持っていたスマホを見て目を輝かす。
「リアム様にお電話ですか?リナ様はお元気ですか?」
 花嫁は懐かしそうに王に聞き、王は優しくうなずいた。
「元気だよ。リアムも元気で仲良くやってる」
「よかった」
「リナと同じ日に挙式をしたくて、今日になったんだろう?」
「はい」
 王は知っていた。シルフィンは異世界から来た救世主が大好きで、こちらに帰って来た時は別れが辛くて泣き虫ドラゴンと一緒に目を赤くしていた事を。
「リナ様の記憶は、やっぱり消えているのですか?」
 寂しそうに問われて、王は苦笑いをした。
「リナはリアムと一緒に記憶を消されると思っていたけど、私はリナの記憶だけ消した。もう戻す必要はない」
 だましたようで引っ掛かるけど、どちらにしてももう彼女の記憶は消している。問題はない。
「リアム様とリナ様が、こちらに来ることはないのでしょうか?」
 ありえないけど聞いてしまうのは、小さな希望が欲しいから。でも王は希望の灯を消すように首を横に振る。寂しそうな花嫁の横顔が気の毒に思うけど仕方ない話もある。
「年に一度、ワインを送って電話をしている。彼らの幸せを見守ろう」
 王は花嫁の肩を抱き部屋を出る。今日は王としてではなく、花嫁の付添人としてエスコートの仕事がある。
 挙式が終わると宴会が始まり、また延々と飲み会が始まるだろう。