スマホを軽快にタッチして、王様は親友との会話を終わらせ天井に向かって大きなため息をした。
 彼女についた嘘は正解か不正解か、今でもよくわからないけど、彼女と親友が幸せなのは間違いないからこれでよしとしよう。
 年に一度の電話の後は、自分で自分を言いくるめて終わる。きっと来年もそうだろう。豪華な天井の天使の絵を見ていたら大きな扉からノックの音がして、花嫁自ら王を呼びに来た。
「王様。そろそろ挙式が始まります」
「うん……綺麗だよシルフィン」
 王はソファに沈んでいた気持ちと身体を起こし、花嫁に向かって歩き出す。
「いつの間にこんなに綺麗な女性になったのかな?私が出会った時はまだ少女だったのに」
「王様」
「白いドレスがよく似合うよ」
「襟元に口紅がついております」
 花嫁に冷静に指摘されて、王は冷や汗をかきながら、さっきまで一緒に過ごしていた侍女の唇の色と確認した。シルフィンは指を鳴らして王の襟元の汚れを落とし、深々と頭を下げて挨拶をする。

「今日までお世話になりました。今日から城を離れてジャックと一緒に暮らします。呪術師の祖母が亡くなり、ひとりでどうしていいのかわからない私を救ってくれてありがとうございます。慈悲深い王様は私の……私の……」
 花嫁は声を震わせて王に感謝と想いを告げるけど、どうしても最後の一言が言えなかった。本当はずっと潜めていた自分の心を伝えたいのだけれど、身分を考えるとそれは言えないし、言ってもどうにもならない。王の心はまだ異世界の女性にあるのだからと……。

「王様は私の命の恩人です。感謝しております」
 シンプルな白いドレスを着た花嫁は凛としていた。彼女はいつも隙がなく凛としていた。彼女はいつものツインテールは封印して、黒い髪をアップにしている。パールのピアスが映えて美しい。