「この世界での魔法だが、私たちは使えるがリアムは使えない」
 言いずらそうにアレックスはそう言った。私のせいで使えなくなってしまったんだ。うつむいて落ち込んでたらフレンドが小さな手で「フレンドも使えないよ」と言い私の頬をパチパチ叩く。
「そうだ、フレンドも使えないからリアム様と一緒だね」
 私の気持ちを軽くするようにシルフィンが助け舟を出してくれた。

「リナ、これはリアムの希望なんだ。リアムは魔法が使えなくてもリナの傍を選んだ。リアムは私達の世界から離れる。私達が戻ったら、もう二度とリアムは私の国には戻れない」
「それは聞いてない!」
 魔法が使えなくなるだけではなく、自分の故郷にも戻れないなんてリアムがかわいそうだ。つい声を上げてしまったので、私の膝の上に座っていたフレンドがビクついて半泣きになってしまった。ごめんごめん。「ごめんフレンド」優しく抱き直してあやしながら、私はリアムの顔を見つめた。
「リナに言うとまた混乱するから、黙っていようと思ってた」
「アレックスの力で向こうの世界と行ったり来たりできると思っていた。リアムから故郷を奪ってしまう。故郷どころか、兄弟同然のアレックスと簡単に会えなくなるなんて」
「ルールを決めなければ、軸は壊れてしまうから」
 だって……そんな……。
「私たちはリアムとリナと、二度と会えなくなるだろう。二人は私たちの記憶もなくなる」
 衝撃の言葉に私の頭は真っ白になる。リアムを見ると無言で小さくうなずいていた。
「さよならだよリナ」
 覚悟を決めたように私以外の人達はサッパリとした顔をしていた。これは……私が何を言っても決定なのだろう。

「ハロウィンというコスプレ祭りがあるのだろう?」
「10月の末にある」
「コスプレをしてカボチャを食べて、一年の無病息災を願う祭りらしいね」
 何か違うけど……。
「その日まで私達はこちらで過ごす。時間はまだあるから、それまで一緒に楽しもう」
 アレックスの声は木漏れ日から射す光のように、温かく優しい。
 私は「はい」って一言返事して顔を上げる。みんな清々しい顔をしている。
 そうだね、出会えた奇跡と限られた時間を大切にして
 ハロウィンまで楽しく過ごそう。