「向こうの世界の両親もこちらの世界の家族も同じくらい大切な存在だ。そして一番大切なのはリナだから」
「リアム」
  彼の手が私の髪を触り、そのまま首筋に伸びて胸元に伸びる。
「魔王が去って国も元気になった。アレックスは最初に滅びた神殿を見事に作り直し、国民の支持を得ている。もう平和が戻った」
「フレンドは?」
「ずっと泣いていたが、子供は立ち直りも早い。みんな前を向いて生活している」
 みんな前を向いている……これほど嬉しい言葉はない。リアムの手のひらが私の胸の先端をもてあそぶ。さっき愛し合ったのにゾクゾクする甘いしびれがまた蘇る。
「……やめて」
「どうして?」
「だって……感じてしまう」小さな声でそう言うと、彼は笑って「感じさせてるんだからそれでいい」って耳たぶを甘噛みして、長い指を遠慮なく下腹部に移動する。
「リアム」
「何だ?」
 すでに私の上に覆いかぶさり、彼は天井と私の間で綺麗な顔を私に向けた。重なる肌がしなやかで熱い。
「後悔してない?もし、間に合うのなら私が向こうの世界に……」
「リナがいればそれでいい」
 その低く魅力的な声で甘い言葉を囁かれたら、誰も反論できないだろう。
「愛してるリナ」
「私も愛してる」
 世界で一番愛してる。でも、アレックスはどこにいるのだろう?彼だけが見えない。
 
 大切な質問の答えを教えてもらったのは、遅すぎる夕食を私が作っている時だった。
「明日、会わせる」と、彼は約束してくれた。
 アレックス……やっと会える。
 ジャックがバイク便社員でシルフィンが地下アイドル。金持ち御曹司がアレックスと思ったらリアムで肝心のアレックスはどんな登場なのだろう。期待と不安を混ぜながら、その夜はリアムと向こうの世界の懐かしい話をして、私は幸せな夜を過ごした。