「勇翔が一目ぼれした運命の女性に会えて光栄だ。ぜひ勇翔の恋人として我が家に遊びに来て欲しい。妻も待ってる」
 ロマンスグレーの男性は、社長の立場ではなくリアムの父親として私に温かい笑顔を見せてくれた。こう見ると、社長は背も高くて目が涼しげでリアムに似ている。
「その前に会長に合わせる約束をしてるので、京都へ行かないと」
「その帰りでもいいから連れて来なさい。お母さんが勇翔の想い続けてる女性を見たくてウズウズしている」
「里奈をいじめないでしょうね」
「おいおい、お母さんは娘が欲しくてお前の結婚をずっと待っていたんだよ。いじめるどころか取られるぞ。里奈さん待ってるよ」社長は優しい声を出して私にそう言い、常務と一緒に会社に戻って行ってしまった。
 呆然と後姿を追ってしまう。すんごく自然な親子の会話。違和感なくリアムは社長の息子設定になっている。
「こんな場所だけど紹介できてよかった」
 リアムは私を助手席に乗せ、慣れた感じで車のエンジンをかけてハンドルを握る。
 リアムが車を運転してる……不思議な気分。
「社長は私の事を知ってるの?」
「見合いの話が沢山あった。でも『自分には運命の女性がいるから彼女とじゃないと結婚しない。それを許さなければ跡を継がない』って宣言した」
 それは宣言じゃなくて脅しです。