追いかけようとしたら、後ろからさっきの同期が「今日はジャックだったんだ。いいなぁ」って私に言う。
 ジャックって!どうして知ってるの?驚きの表情で振り返ると「顔怖い」って素直に言われてしまった。
 
 ごめん
 落ちつこう私。
「今のがジャック?」しらじらしく聞くしかない。
「そうそう。ジャックはめったに来ないから驚いた。いつもはサム、ボブとか……ルイスも多いかな」
 みんな騎士団の連中だし……何をやってるんだ。
「がっ……外人さん?」
「まさか。スタジャンの背中に書いてる名前。とにかく仕事が速くて安心して使えるって、人気急上昇のバイク便で、全てイケメン軍団だから有名だよ。こないだ深夜のテレビに出てたんだって、取材されてたって久保ちゃんが言ってた。見たかったなー」

 そうなの?じゃ、今見たジャックは幻じゃなくて、リアルで存在するのね。
 バイク便で働いてるなんて、似合いすぎでしょう。
「どしたの急に?」
「あ、ううん。大丈夫」
 そう返事をしたけど、正直言って全然大丈夫じゃない。胸の鼓動が爆発しそう。頭がクラクラして倒れそうだ。

 いったいどうなってるの?さりげなくもらった伝票を見ると【バイク便 ゴールドバード】と書いてあった。ゴールドバードって騎士団連中の行きつけの居酒屋の名前でしょう。こっちの世界で何をしてるんだエリート軍団!私はスマホを手にして総務を飛び出し女子トイレにダッシュした。個室にこもって鍵をかけ、震える手で【バイク便 ゴールドバード】を検索するとホームページ発見。
 ホームページあるんかいっ!
 突っ込んで叫びたい気持ちを抑えて、指を滑らすとおしゃれなサイトに繋がった。

 ジャックを中心にさっき見たスタジャン姿で揃え、エリート騎士団達がバイクの前にずらりと並んでいた。
 みんな現代風で、ジャニ系からエグザイル系までイケメン揃い。どのチョイスで決めたメンバーなんだろう。安心で素早くて値段の相談ありとか、オンライン集荷やら配達状況とか、色々親切丁寧に書いてあるけど、こんなバーンとイケメン揃えたら、女子としてはどうしてもそっちに目がいってしまう。
 唖然として細かなサイトを見ていたら、下の方に何やら仕事以外のリンクもあった。

【イチオシ 地下アイドル!応援お願いいたします】
 可愛いペガサスマークと共に水色の文字で書いてある。

 嫌な予感がする。
 なんでバイク便のサイトでアイドル?
 それも…地下アイドル?
 ドキドキMAXで開いてみると
 
 黒髪ツィンテールの美少女がマイク片手に笑顔をふりまく画像が出て来た。
 ☆地下アイドル シルフィン☆




 めまいが……してきた。