友達を誘ってワインバーにも行った。どうしてもあの国のワインの味をもう一度味わいたくて、色々なワインを味見したけど、あれほど豊潤で口に含んだ瞬間『美味しい』と言えるワインには出会わなかった。1本10万のワインを開けようとして必死で友達に止められたっけ。
 
 色々試してダメになるほど落ち込んだけど、今は想い出に変換して、ぼんやりとラテを飲みながら私の行った世界の事をこの時間だけぼんやり考える。
 シルフィンにもラテを飲ませてあげたいな。ジャックにスクランブル交差点を見せたいな。ドローンと対決したらどっちが勝つかな。クスッと笑うと隣のお姉さんが背を向けた。不気味でごめんなさい。

 もう戻れないし、二度と会えないと思ったら、こうやってぼんやりと楽しい時間を思い出そう。涙が枯れるほど泣いたし、大人なんだから現実を見なきゃいけない。温かい不思議な魔法の国で色んな冒険をしたよ。全て妄想かもしれないけれど、素敵な想い出をありがとう。
 そろそろ妄想の世界とさよならしなきゃいけないけれど、まだ時間が足りないみたいで、枯れた涙がまた溢れてしまう。
 どうして戻って来たんだろう。
 いや、妄想なんだよ全て……でもその妄想にさよならできない自分が情けない。やっぱりポンコツ救世主だね。

 早く楽しい想い出に変換したいのに、こんなに好きになるんじゃなかった。

 妄想でもいいから
 どんな形でもいいから

 リアムに会いたい。