エレベーターもチェックした。
 何度も乗った。迷惑だけど15階で乗って14階で降りた。コスプレドレスの王妃様を探したけれど当然姿は見せず、怪しい動きをして広報部に鋭い眼でにらまれて終わってしまった。

 リアムに会いたい。リアムが恋しい。
 アレックスにもシルフィンにもジャックにもフレンドにも会いたい。あぁフレンド……私が急にいなくなって絶対また泣いている。街のみんなにも会いたい。騎士団のみんなにも会いたい。
 リアムに会いたい。強い力で抱きしめてもらいたい。
 まだプロポーズの半分もらってないよ。長い髪に触れたいはにかんだ笑顔が見たい。
 心から愛した人だった。私は一生懸命もがいてもがいて、見えない蜘蛛の巣に引っ掛かったように精一杯もがいて、向こうの世界に戻ろうとするのだけれど。何をやってもできなかった。
 変な黒魔術のサイトも覗いたし、書店でファンタジー小説も読みまくった。異世界に飛ばされたヒロインは現代には戻らず、向こうの国でそのまま幸せに生活するかのパターンを山ほど読んだ。
 どうしてそのまま私も幸せに暮らせなかったのだろう。読んだヒロイン達は自分の現代でのスキルをあちらの世界で役立てて、商売にしたり尊敬されてたりしていた……やっぱり私はポンコツだから返されたのか?
 ファンタジーを語るサイトを読んでたら、ファンタジーは非情だって書いてあった。人はすぐ死ぬし、王家とか上の位にある人達は非情で、自分たち王家を守ればそれでよし。民も兵も使い捨てという考えも多いと書いてあった。
 それなら納得だ。王妃様がアレックスが心配で私に託し、私が魔王をやっつけたらもう用はなくポイと捨てる。非情だけどありえる。
 もう私はあちらの世界に居なくてもよろしい。
 私は現実に戻ってそれでおしまい。めでたし。めでたし。中指の指輪をすがるように触りながら、つい泣いてしまう。
 
 これがA案のラストシーン。
 ようするにA案もB案もラストは同じで、もう二度と戻れない。

 リアムに会えないのだろう。