「大丈夫かリナ?」
 リアムのマントで包まれたまま、小さくうなずき手を貸してもらって立ち上がる。
 まだ部屋の中は熱いけど、さっきまでの威圧された嫌な雰囲気はない。後ろを見ると大きな砂時計の砂は下に落ち、ジャックはシルフィンを支えて立って、アレックスは声もなく黙って私達を見ていた。

「勝った?……かな?」
 一発大逆転?王妃様の指輪が最大の武器だったのか。窓の外から温かい太陽の光が射してきた。
 外を見るともう暗く重い雲はない。いつの間にか嵐は終わり、どこまでも青い空が高く広がっていた。
 フレンドが踊るように空を飛ぶ。
 自由に大きく
 生きる希望をどこまでも伝えるように飛んでいる。
「街に戻ろう」アレックスが軽く手を上げると、私達の身体はフッと浮き上がってからの瞬間移動。
 魔力も戻った!
 闘いの最初の場所である壊れた神殿の元に立つと、ドームから流れるように人々が溢れ出ていた。国中の人達は笑顔を見せながらドームを出て、私達を見つけて歓声を上げる。
「アレックス」
「うん」
 アレックスは一歩前に立ち、片手を上げると国民の歓声が倍になった。
 神々しい王の姿を見ているとこっちまで泣けてきそう。
 勝ったんだね
 もう闘わなくていい。命を狙われる心配はない。誰も犠牲にならなくていい。堂々と生きるだけ、希望を持って生きるだけでいい。モフモフした物体に身体をドンされた。
「フレンド!」泣き虫ドラゴンが私のハグを待っていた。
 私はフレンドをギューッと抱きしめて、思う存分涙を流す。頑張ったね。えらかったね。強かったね。かっこよかったよ。大好きだよフレンド。
 しばらくその状態でいると「交代」って、フレンドから私を奪い、騎士団長は私を自分の胸に抱く。
「リアム」
「さすが救世主だ」
 溶けるような甘い甘いキスを交わし、その腕に抱かれてやっと気持ちが落ち着いてきた。いや……まだ興奮してる。それはリアムも国中の人々も一緒だろう。でもそれでいいと思う、私達は勝ったのだから、今日はこのまま幸せに浸っても罰は当たらないと思う。
「よく俺だとわかったな」
「愛の力」ふざけて言うと、耳を甘噛みされて頬が熱くなった。
「ありがとう」
 心からのリアムの言葉に胸も熱くなる。
「プロポーズの続きの言葉、待ってるからね」小声で言うと、もう一度甘いキス。
 幸せで足元も震えそう
 って
 
 あれ?

 本当に震えてる?