自分で気分を上げながら2階のボタンを押すと、すぐ下の14階でエレベーターは停まってしまった。やっぱりエレベーター独占はならず。苦笑いで14階で扉が開くのを待っていると、開いたと同時にひとりの女性がスッと音もなく乗り込んできた。

 そして私は、その女性を見て息を止めてしまった。
 なぜならば、彼女の服装が完璧コスプレだったから。コスプレがコスプレを越えているというのか、美しさとその品のある立ち姿に圧倒されたというのか、つまり異次元だった。おっ……お姫様?
 えっ?14階って広報課のフロアだっけ?来月とかイベントあったっけ?
 彼女はエレベーターのボタンも押さず、狭い箱の中で私の正面に身体を向けてジッと目を見る。

 とても美しい人だった。デコルテを出したグレーのドレスはシルクだろうか、艶があり優雅に広がっている。両方の肩からウエストにかけて金の刺繍をあしらい胸元には細かいアンティークレース。絞られたウエストが細くて下に広がるドレスのラインを美しく見せている。

 そのドレスに負けないのが着ている本人である。
私より背が高く、腰まである髪は柔らかくウェーブがかかっていた。黄色がかった薄い茶色の髪が輝いている。あぁこれが亜麻色の髪なのね初めて見た。そして透けるような肌の白さとスミレ色の瞳。

 やばい。これはかなりの美形。どこかのモデルさんかな。緊張してしまう。なんて品があって、透明感があって美しい女性だろう。ブラウスにベストにカーディガンという、定番の自分の事務服が急に恥ずかしくなる。