「ここまできて、私って本当にダメダメ女だ」
 ボソッと本音を吐きだすと、首に剣を突き刺されそうな右のリアムが「勇気を出せリナ」と叫び左のリアムは眉間にシワを寄せ、怒ったようにこう言った。

「リナはポンコツではない!何度言わせるつもりだ!」と……。

 ビンゴ!
 やっぱり思った通り左が本物のリアム。左のリアムで大正解!
 私は自分の魔法の剣を素早く抜き、迷いもなく右のリアムの胸に突き刺すと、本物の左のリアムも私に続いて首筋に向けていた剣をそのまま強く突く。魔王は胸と首から血を流しながらも、笑顔で私に話かけた。

「なぜわかった?」
 愛する人と同じ顔だけど、その笑顔は邪悪そのものだった。
「迷ったよ。最後まで迷った。でもポンコツワードは私は何度も使っていて、リアムも理解していた。それに……リアムは私を溺愛している。何があろうと私を優先して、私の思うまま行動しろって言ってくれる」って自分で言うのも恥ずかしいけど。
「それに最初にフレンドを心配していた。この国の騎士団長は全てに目を通し、人の痛みを自分の痛みとする優しい人だから」素晴らしい人なんだ、私の愛する男性は。
「俺のリナに愛の言葉を吐くな!」突き刺した剣をもっと深く射し、嫉妬丸出しで叫ぶリアム。うん。この嫉妬深さは間違いなくリアムです。
「見事だ異国の女……しかし、私を倒せるのかな?」
 リアムの姿をした魔王は血を流しながら楽しそうに言うと、一瞬でその身体は消えてしまった。
 私達は剣を突き刺したままだったので、いきなり突き刺していた腕が軽くなり、身体をふらつかせながら互いを支えた。
「勝負に勝っても、私を倒せなかったら意味がない」
 魔王は平然とリアムの姿のまま、また現れて私達の前に立つ。
 やっぱりこの剣で刺しても勝てないの?
「『私と命を賭けた勝負をしよう』って言ったじゃない!言葉通りに負けを認めて倒れなさいよ!」
「だから倒すチャンスを与えてるだろう。どうする?砂はもうないぞ」
 魔王の高笑いの声を聞きながら振り返ると、本当だ砂時計はもうほどんどない。アレックスとジャックとシルフィンはもう言葉もなく私を見るだけだ。
 あきらめたのか叫びも泣きもしない。
 
 手にしている剣は魔法の剣で、誰も手にできなかったけど私は手にした。そして私は王妃様から、この国を救うために呼ばれた女。何が足りない?中指の指輪がまた熱を帯び、私は珊瑚の指輪をその場で外した。