「でも確証はないから、今度は二人のリアムと私と三人で話したい」
「もう時間はないぞ」
 アレックスの顔が青白い。ごめんねアレックス。もう少し、もう少しだけ時間を下さい。
「砂時計が終わるまでに必ずなんとかする。でも心配なことがひとつある。さっきの闘いを思い出してほしいのだけど、リアムが魔王の動きを封じ込んで、私がこの魔法の剣で魔王の目を突き刺したんだよ。しっかり間違いなく突き刺した。でも、魔王は軽々と剣をつまんで私ごとポイした。つまり、この魔法の剣は効かないかもしれない」
 一気にアレックスに言ってみると、アレックスは深く息をしてから私を見た。
「さっきは、何か足りなかったかもしれない」
「何かって?」
「わからないが、今度はわかると思う」
 またそんな意味不明な事を言う。不安になってたら急に左の中指が熱を浴びたように熱くなった。慌てて左手を見ると、王妃様からもらった赤い珊瑚の指輪が光っている。アレックスもジャックもシルフィンも私も、指輪を見てから互いの顔を見合わせた。この世界に私を呼んだ王妃様に背中を押された気分。
「時間がありませんリナ様」
 ジャックに言われて背筋を伸ばし、二人のリアムに私は呼びかけた。
「最後に三人で話をしましょう」
 左右のリアムと私は砂時計の前にトライアングルの形を作り、命を賭けた最後の話し合いを始める。
 
 絶対負けられない。皆の為に……リアムの為に……。右のリアムは「時間がない」と怒ったように言い。左のリアムは「リナの好きにしろ」と静かに言う。
 左右のリアムは声も形も同じ。私の愛するリアムとさりげないリアクションも同じ言いそうな事も同じ

 だけど
 
 違う。

「こんなギリギリになっても、私は自分の愛する人がどっちか迷ってる」二人の顔を見ながらそう言うと、左のリアムは目を閉じて右のリアムは真っ直ぐ私を見つめる。
 行動が違う。
「愛してるリナ」
 右のリアムがそう言うと、左のリアムのまぶたが動いた。
「私も愛してる」右のリアムに答えると、左のリアムが素早い動きで剣を出して、右のリアムの喉元に切っ先を向けた。
「リナの信じるままに、ヤツを殺せ」
 あと数ミリ突き刺さると、自分の命が奪われるの確定なのに、右のリアムは冷静な声で私に命令した。
 アレックスたちが息を飲んで私達と砂時計を見つめている。
 もう砂はあとわずか。このままでは、リアム同士の殺し合いが始まるけど結果は見えている。魔王には勝てない
本物のリアムは私達より先に死んでしまうだろう。左手の中指がまた熱くなってきた。どちらのリアムが本物か私の心は決まっているが完璧なる確証はない。

 間違って愛する人を刺すのは怖い。