「リアム!」

「リナ!」
「リナ!」
 生きててよかった。また会えてよかった。大好きな大好きなリアム。ぎゅっとそのボロボロの身体を抱きしめてあげたい。互いに駆け寄った中央の場所あたりで、アレックスの身体が壁のように私達を遮った。
「近寄るな!どっちかはリアムだけど、どっちかは魔王だ」
 そう言われても、切ない目をする二人のリアムを見ていると、どっちでもいいから三人で抱き合いたい気持ちになる。
「リナもリアムも下がれ、リアムはこっちからこっちに来るな」
 部屋にあった高そうな花瓶を床に置き、アレックスは私を引っ張ってジャックとシルフィンを呼んで円陣を組み、リアム達はあきれた顔でその場に座り込む。
「どうなってるの?」私が大きな声を上げると「誰もが知りたい」アレックスが言い、ジャックとシルフィンは真剣な顔でうなずく。
 そうか誰もみんなわからないまま、ここに飛ばされたんだ。
 愛する人をジッと見るけど、ダメだ同じ顔してる。雰囲気も同じで声も同じだった。あのふてくされる態度の悪さもまさしく二人ともリアムだ。ドンドンと窓の外から音がして、窓に目を移すとフレンドがいた。
「フレンド!」叫んで大きな窓にダッシュすると、フレンドは私を見つけて泣きながらこっちを見つめる。窓いっぱいに映る顔を見て助かったんだと安心して涙が出た。
「フレンド。よく頑張ったね。すごく強くてカッコよかったよ。本当に本当に頑張ったね。偉い偉い」ガラス越しに互いに大泣きしてしまう。よかった。生きててよかった。窓を開けようとするけれど、あれ?開かないな。
「アレックス。窓を開けてほしいの。撫でてあげたい」
「私もそうしたいのだが……」
 アレックスがゆっくり私の傍に来て、手を上げたり呪文を唱えるんだけど、窓は開かなかった。手動で開けれないのね不便だわ。
「どうやら、私もジャックもシルフィンも魔法を使えないんだよ」
「えっ?」
「窓も開けれない、お茶もワインも出せない。だから……魔法でどちらが本物のリアムか見つけるのは……無理らしい」
「そうなの?」
「うん。リナ式に言うのなら『めちゃめちゃ不便』というやつか?合ってるかな?」
 うん合ってるけど、それはどうでもいいとして……えーーーっ!!!
 どっから突っ込もうと思っていたら。どこからともなく低い声が部屋中に聞こえてきて、その震えるような怖い声に身をすくめる。

『異世界の女よ。お前の愛する男が目の前にいる。さぁ早く抱きしめキスをしろ。でも、間違えるとお前の命も男の命も失うだろう。国を滅ぼし国民の命もない。この部屋に居る者たちと窓の外のドラゴンは生きたまま八つ裂きにしてくれよう』

あまりの恐ろしい言葉に言葉も出ない。