「なぜ死に急ぐ?」
「あんたが私の愛する人を殺したからよ。だから私を殺してそれでおしまいで帰って!」
「本当におもしろい女だ」
「どうでもいいから、早く終わらせて帰ってよ!」
「さっき矢を放ったのがお前の男か?奴はまだ死んでない」
「えっ?」
 生きてる?リアムは生きてるの?それなら前言撤回でまだ死ねない!早鐘のように鳴るな心臓を押さえ、私はリアムの方を見下ろそうとした瞬間

 身体が浮いて
 意識も遠のく

「賭けをしようか?おもしろい異世界の女。お前と命を賭けた勝負をしよう」
 グルグルと二日酔いのようなめまいが私を襲う。身体が浮き上がり下がり、意識も浮き上がり下がり、一度ふわりと思いっきり浮いてからドスンと音を立てて堅い床に突き落とされて、身体が痛くて軽く悲鳴を上げると「リナ様!」目の前にシルフィンがいた。シルフィンどころかアレックスもジャックもいる。

「ここはどこ?」
 さっきまでの荒れ狂う神殿の丘ではなく、静かで広くて空気も綺麗で、天井には天使が舞っている。この見覚えのある天使のお尻はよく知ってる場所でアレックスの部屋だ!
「どうしてここに?みんな大丈夫?」身体中痛かったけど、シルフィンに手を貸してもらって立ち上がる。
「リナは大丈夫か?」アレックスが心配そうに私に聞いた。
「私は大丈夫。リアムは?魔王がリアムは死んでないって言ってたの!早く見つけて治療しないと」
 私が訴えると、3人は顔を見合わせて黙ってしまった。

 えっ?どういう事?その表情はどういう事?
「アレックス。リアムはどこ?私達だけ飛ばされたの?魔王はどこ?」
「リアムは大丈夫だ。たぶん……大丈夫だが……」
「アレックス!」意味がわからないその説明。説明上手なあなたがそんな下手な説明をするなんて。
 するといきなりスッと三人が私の視界から離れたので、私は部屋の入口に目をやって、彼らの無言の意味を理解した。

 入口にリアムが立っていた。
 ボロボロのマントに汚れた軍服、闘いの後の服装をして、頭を軽く押さえて私達を見ていた。

 それも
 ふたり同じ姿で……

 リアムがふたりいた。