フレンドの背から神殿に佇むアレックスとシルフィンの姿が見えた。ふたりは攻撃をしながら私達を見守っている。その姿だけでも百人力だ。火の粉を浴びながら魔王の顔に突撃するけど、近くで見ても実体がない。粒子の固まりなのに、なんでこんなに強いんだろう。本物はどこにいるの?気まぐれ遊びで国を滅ぼして楽しんいるようだけど、それってかなり迷惑なんですけどっ!
 すごくすごく怖いけど、怖さの向こう側までたどり着いた心境で、怒りが湧いてくる。どうせ簡単に握りつぶす気でいるんでしょう?
 私は魔法の剣を握り直した。私は救世主。ポンコツだけど、亡くなったお妃様にあっちの世界から呼ばれた救世主だ。負けてなるものか!プロポーズの半分も残ってるんだから!
 神殿からのアレックスの攻撃の勢いがつき、魔王が顔をゆがめた時、ジャックが高速でヤツの目の前で苛立たしく飛び、そっちに集中させてからフレンドが近寄ってリアムが今度は真っ赤な矢を放った。この一本だけ赤くて不思議に思っていたら、アレックスの魔法がかかっていて、どんな力のある魔法使いも獣も身動きできなくなるらしい。

 魔王は初めて動きを止めた。
 やった!リアムの背中越しに手応えを感じて喜んでいたとたん、気に障ったのか魔王は本気を少し出し、今まで粒子だった身体をそのままの大きさで実体化させ、手を出してフレンドの身体を捕まえた。
 フレンドが痛みで大きな大きな叫び声を出し、その衝撃で私とリアムはフレンドの身体から落ちそうになる。
「リナ!」リアムが振り返り私に手を出し、それをつかもうとしていたらフレンドをつかんでいた大きな魔王の手がリアムをつかみ、ニヤリと私に笑ってからリアムをそのまま握りつぶした。