「今日はお互い疲れたから、ごほうびワインか」数時間前の冷たい表情が嘘のように、アレックスは優しく私に微笑んでグラスを向ける。
「殺されるかと思った」
「悪かった。でも、あそこまでやらないと、リアムの本気が見れなくて。悪いのはリアムだから」色気のある顔でウインクされたら何も言えません。悪いのは全部リアムで問題ないです。
「リアムを頼む」
 笑顔の裏を覗くのが怖い。アレックスはドームを造ったり、リアムを想って私にお願いしたりで、死を急いでる予感がしてたまらない。
「アレックス」
「何だい?」
「何度も言うけど、私達は勝つよ。勝ってみんなで幸せに暮らしましたって結果になる」
「占い師リナ」苦笑いでアレックスはグラスを傾ける。
「いや冗談じゃなくて、私なんてあっちの世界じゃ、付き合ってた男に結婚寸前で捨てられて、仕事に生きるしかない平凡な女だった。臆病で別の生き方もできない女だったけど、こっちの世界に呼ばれて気付いたの。アレックスのお母様に呼ばれたんだって。この国を救う為に私はやってきた。自分の道は自分で切り開く。ダメとか無理とか言いたいけれど封印しようよ。お互いに約束しましょう」
 そう言いながら、一番先に約束を破って言いそうなのが私だけど。
「アレックスを見ていると辛い。リアムもそうだけど頑張り過ぎて押しつぶされそう。みんないるよ、私もシルフィンもジャックも国民もみんないるから……だから絶対勝とう」

 言霊よ我に降りろ!真剣に私がアレックスに言うと、アレックスはゆっくり「ありがとう」と言い私に近づきそっとハグをした。
「友情のハグとみていいでしょうか?」その腕の中、恐る恐るアレックスに聞くと笑われた。
「もしリアムが行動に出なかったら、本気でリナを妃にもらおうと思っていた」
「えっ?」
「美味しいワインをありがとう。さぁ今日は疲れたろう、もうそろそろリアムも帰って来る。決戦の前にリアムとリナの挙式をしようか?」
「挙式は勝利の後のお楽しみにします」
「そうか」などとアレックスに宣言したけど、リアムと結婚の約束ってしたっけ?先走った返事に照れてしまう。
「リナ」
「はい」
「やっぱり私の妃になるか?」
「アレックス」
「ん?」
「胸元にキスマーク付いてます。あと女性用の香水の香りがします」
「えっ?いや……虫?虫かな?」
 アハハと乾いた笑いをして私の身体を離すアレックス。この国の王様がたらしだったのを忘れていた。この忙しい中、おねーさんと遊ぶのは忘れてないのか。さすがだ。
「まだ遊びたいから結婚はしない」サラッと言われて私はクスッと笑う。素直な王様だ。しばらく結婚はないらしいよ。よかったねシルフィン。
「おやすみ」軽く頬にキスされたと思ったら、私の身体は瞬間移動で自分の部屋に戻ってしまった。

 アレックス、言霊は絶対あるよ
 私は信じてる。