その夜
泣きつかれたフレンドは城に帰ると秒で寝てしまい。リアムは東の領地に獣虫が現れたのでジャックとお出かけ、シルフィンは街で魔除けのお仕事。さりげなくみんな忙しい。私は夜の厨房にこっそり入り、身体を低くしてキョロキョロと不審者のように動き回る。シェフに見つかったら怒られそうだ。鍋も魔法で磨けない私がシェフの聖地に入り込むとは、それこそ命がないだろう。
私は自分用に作ってもらった冷蔵庫の中からガラスの瓶を取り出した(みんな魔法で冷たい材料がすぐ出せるので、冷蔵庫が必要なのは私だけだった)小さなスイカほどのガラスのボールには、私は中庭からいただいたリンゴ、レモン、キウィ、オレンジをカットして白ワインに寝かせていた。自家製サングリアのできあがり。ちょっとハチミツも入っているので美味しいよ。私は音を立てずにガラスの瓶の液体を二つグラスに移し、そっとアレックスの書斎に持って行く。
アレックスは書斎で仕事中なのか、難しい本を片手に疲れた顔でソファに沈んでいた。
「少しいい?」
「大歓迎。よくここまで来れたね」
「魔法のドアが私の部屋にあるので」
ドヤ顔で私は言い、自家製サングリアをアレックスに差し出した。
「フルーツの香りがする」
「サングリアっていうの。私は白ワインが好きだけど赤で作っても美味しいよ」
「美味しい。これは街でも流行りそうだね」
そうだ!居酒屋さんに売り出してみよう!ワインが美味しいのだからサングリアも絶対美味しいはず!
「リナはすごいね」
「すごくないよ」
全てにおいて凄いのは、あなたの方でしょうアレックス。