ファトマルとオンガたちは牢に入れられ、裁判を待つ身となった。
グスタンで囚われの身となっていたルシーアやイリエネを始めとする花乙女たちもそれぞれの郷に戻って行き、リンファスには平穏な日々が戻って来た。

リンファスとプルネルは一緒に刺繍を刺しながら談笑をしていた。

「……またこうしてプルネルと過ごすことが出来るようになって、本当に幸せだわ……」

あの時はこんな時間がまた持てるなんて思えなかった。プルネルもほっと息を吐き、安心したわ、と呟いた。

「リンファスがさらわれたと聞いて、何も出来なかった自分が悔しかった……。待っているだけの自分が情けなかったわ」

「プルネル、そんなことないわ。私、貴女たちを思い出して、なんとか帰りたいと思っていたの。貴女たちとの友情がなかったら、早々に諦めていたと思うわ。……だって、父さんの言いつけですもの……」

プルネルはリンファスを痛ましい目で見ると、でも、と言って続けた。

「親子の縁は大事だけど、子供は親から巣立つものだし、何時かはリンファスもお父さまと別れなければならなかったのよ。その時だった、と思うしかないわ」

「そうね……。私はもう、あの頃の未来とは違う未来を歩いているんだわ……」

この数ヶ月でリンファスを取り巻く環境は激変した。
鬱々とファトマルに使われるばかりだった日々から、友人を得て、更には愛する人まで出来た。ウエルトの村で過ごしていた頃は想像もしなかった未来だった。

感慨にふけっていると、プルネルが部屋の時計を見た。

「リンファス、そろそろ時間じゃないの?」

「あっ、本当だわ。じゃあ、私、行くわね」

「ええ、気を付けて。帰って来たらお話聞かせてね」

リンファスは頷くと、針と糸を置いた。そして紫の石の入ったネックレスを着けると、宿舎を出た。すぐそこの角の楡の木の下まで駆けていく。其処には淡い金の髪をたなびかせるロレシオが居て……。

「ロレシオ!」

振り向いたロレシオはフードを被っておらず、美しい瞳でリンファスを眩しそうに見た。

また新たな花乙女とイヴラの恋物語が始まる――――。







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