三日後にロレシオから手紙が来た。
インタルの音楽ホールで行われる音楽劇を一緒に観ないかという誘いだった。
きっと観劇前かその後に話が出来る。リンファスはプルネルの励ましも受けて、音楽ホールへ出掛けた。
席で待ち合せようという誘いだったから、ハラントに送ってもらって音楽ホールまで来た。
招待状を見せると、二階のバルコニー席に案内されたが、まだロレシオは来ていないようだった。
何時も角の楡の木で待ち合わせをしていたのに、今日、迎えに来てくれなかったのは、もしかしたら気まずいと思ったのだろうか。
リンファスに誤解があるなら早く解きたいから、早く話せた方が良かったのに。そう思ったけど、時期じゃなかったのかもしれない。
もしかしたらこの音楽劇に何かヒントがあったりするのだろうか。そんなことを色々考えていたが、開幕の鐘が鳴るまでロレシオは席に現れなかった。
どうしたのだろう、急に来れなくなったのだろうか。
もしかして病気とか怪我……?
灯りの消された暗いバルコニー席で舞台上の劇の内容も頭に入って来ない状態で、リンファスは不安と共に一時間半の音楽劇を終えた。
歓声と拍手が鳴り響く中、客席を照らすシャンデリアと壁のランプが灯る。
ふと目に入ったのは、向かいの壁の三階の一番奥のバルコニー席に白い髪の少女が座って居るところだった。花乙女だわ、と思ったら、遠目でも良く目を引く色とりどりの花を着けたサラティアナだった。
サラティアナとは三日前に言いがかりをつけられたままになっていた。
結局彼女の言ったことも分からず終いだったし、ロレシオも現れなかった。
そう思って彼女の方を見ていたら、隣の席に座って居る人をリンファスの目が見つけた。
(……ロレシオ……)
淡い金の髪を肩から右の胸に流した姿は間違いようもなくロレシオだった。
ロレシオが、明かりの下でサラティアナと話をしている。
広間でプルネルたちに紹介したいと頼んだ時は拒んだのに、サラティアナとならフードも被らず明かりの下で談笑するの……?
リンファスに咲く花の意味は……?
「…………っ」
ロレシオの真意が分からなくて涙が出る。
信じたいのに信じることが出来ないことが次々と起こって、リンファスはバルコニー席を飛び出した。
ぱたぱたと走るリンファスの後に蒼い花が点々と落ちる。
どうして咲くの?
サラティアナを選んだんじゃないの?
訳が分からないまま、音楽ホールから逃げるように走り続ける。その時リンファスを怒鳴るように呼ぶ人が居た。
「リンファス!」