街の中を、ガラガラと馬車(フェートン)が車輪の音を立てて人々の目線の先を横切って行く。馬車は、真っ白な建物の門扉の前に止まった。
その馬車の様子に、通りを行き交っていた人々の注目が集まる。

「おい、ハンナだ」
「また花乙女を見つけてきたんだな」
「ああ、白い髪、白い肌、紫の瞳の色。花乙女に間違いない」
「でもおかしくないか、あの子」
「本当だ……」
「花がついてない……」

人々の注目の的となっている花乙女には、確かに一つの花も、ついていなかった……。