「理樹だって、超迷惑してるってわけじゃないだろ?」
「事実上の迷惑は掛けられてるが?」
「ははは、そういう意味じゃなくてさ。だってさお前、人を毛嫌いするなんてしないじゃん」

 言われた意味が分からず、理樹は顔を顰めた。すると拓斗が歩きながら、近い距離から人差し指を差し向けてきてこう言った。

「俺はお前のそういうところが好きなんだぜ、親友」
「意味分かんねぇ」

 向けられた指をやんわり手でそらしたら、拓斗が「ははっ」と笑って、顔を正面に戻した。

「俺だって『鬱陶しい』なんて思っちゃいねぇよ。青崎レイちゃん、ちょっと変わってるけど面白いし、可愛い子じゃん」

 理樹は「そうか」と相槌を打って言葉を紡いだ。

「実はな、風紀委員長は彼女の兄と交友があるらしい。兄の方が、彼女の友人関係が上手くいくか心配しているんだと」
「孤立してるってのは聞いたことないけどな。この前だって、一組のやつらは理樹があの子を本気で殴り返さなかったのを、めっちゃ安堵してた感じだぜ?」