沈黙からこれで話は終わりだと察し、理樹は「じゃあな」と言って踵を返した。背中の向こうで美麗な風紀委員長が「君はいい男だね」と告げる声を聞いて、この短いやりとりで、そう思わせるように要素は何もないだろうにと訝った。

 たった一目見て、この少年に何が分かるというのだろうか。理樹は向こうから顔が見えないのをいいことに、眉間の皺をぐっと深めた。

             ※※※

 風紀委員会室を出た先で、理樹は見知った顔を見付けて眉を顰めた。

 廊下の壁にもたれかかっていた拓斗が、こちらと目が合うなり「お、無事生還か?」と呑気に片手を振ってきた。つい先程、部室で別れた時には待機を宣言していたのに、やはりあれは嘘だったらしい。

「なんだ、拓斗。待ち伏せか?」
「お前がボコボコにされたら、骨を拾ってやろうかと思ってな」
「嬉しくねぇ気遣いだな」

 風紀委員会は不良集団みたいな組織じゃないだろうに、と理樹は顔を顰めた。隣に並んで歩き出した拓斗が、「んで?」と話しを振ってくる。