「呼び出した理由というのがね、うちの新人のレイ君が迷惑を掛けているというから、顔見がてら挨拶しておこうと思って」

 なんだか意外な呼び出し理由だ。理樹がそう思って見つめていると、彼が続けて「ごめんね?」と少し困ったように微笑した。

「実を言うと、レイ君のお兄さんとは同じ中学だったんだよ。なかなか人と仲良く関わろうとしないって、彼はすごく心配していてね。ちょっと不器用な子なんだ。嫌わないでいてくれると嬉しいよ」

 恐らく出会い頭の騒ぎの一件から、今日まで続いていることについて言っているのだろうと察して、理樹は罰が悪そうに視線をそらして頭をかいた。


「――別に嫌ってはいねぇよ。結構うちの教室に飛び込んでくるけど、クラスメイトも出て行けとも言わねぇし、俺の中学からの親友も、面白い奴だってよく言ってる」


 誰かのために一生懸命になれるような人間を、嫌いになれるわけがない。
 そもそも、自分こそろくでもない悪党みたいな人間だったのだ。だから相手が悪い奴ではないことくらいは容易に分かることだった。