「見ての通り、僕は荒事には向いていない人間だよ。そもそも、君を呼び出したのも風紀に関わる用件ではないから、安心してね?」
「じゃあなんで風紀委員長やってるんだ?」

 理樹は疑問を覚えて、同じ年くらいにしか見えない彼に、ついタメ口で尋ねてしまった。
 すぐに気付いて「すみません、どうしてですか?」と言い直すと、西園寺がまたしても楽しげに笑った。

「別に敬語じゃなくてもいいよ。同学年でもあまり敬語を外してくれる子がいなくて、僕としては新鮮で親しみがあって嬉しいし」

 そう告げてから、西園寺は「ああ、そうそう。どうして風紀委員長をやってるか、という質問だったね」と思い出すように口にしたところで、器用に笑んだまま、柔らかな印象をふっと眼差しから消した。


「――金と権力。そして這い蹲らせるのを見るのは大変愉快」


 やっぱり危ねぇ奴じゃねぇか。

 ドS寄りの気配を濃厚に察知し、理樹の中で、要注意人物として彼の名前がトップに刻まれた。なぜ自分を呼んだのかと警戒して眉を潜めると、西園寺が視線の強さを抑えて、無害だと主張するような先程の柔和な表情に戻してこう言った。