癖のない髪は女性のような艶があり、整った目鼻立ちは、少し西洋人の血が混じっているように掘りも深くハッキリとしている。愛嬌があるパッチリとした二重の瞳は、甘い微笑みを浮かべていてもどこか神秘的にも映った。その容姿も影響して、黒い制服が漆黒の髪ととても合う。

 理樹は愛想良く微笑んでいるその少年に対して、心開かずといった様子で顔を顰めていた。しばらくこちらの様子を見ていた彼が、唐突に、儚げな微笑を無邪気な子供のような笑みに変える。

「あははは、こんなにも警戒を解かない子は初めてだなぁ。はじめまして、僕が風紀委員長の西園寺(さいおんじ)瑛士(えいじ)だよ」
「………………」

 黙っていれば神秘的な美少年だが、その口調はかなり親しげで軽い。

 理樹は爽やかな笑顔を向けられた瞬間、すみやかに回れ右をして帰りたくなった。経験上、腹の底が見えない素敵な笑顔を浮かべるような奴が一番危ないのだ。

 西園寺だと名乗った風紀委員長の少年が「ちなみに僕は三年生だよ」と続けて、まずはこちらの警戒でも解こうとでもいうように親しげに手を広げた。