理樹は遅れて「そういえば見えていたな」と、頼りない面積の白い下着が見えていた光景を思い返し、深い溜息をついて目頭を押さえた。もうお前、長いスカートを履け、と思った。
 こんな時に限って、あの男装の風紀部員はどこにいるのか。こういう時にこそ、面倒なボディーガードとして一役買ってもらいたいところである。

 そう考えたところで、理樹は正門へと入っていく生徒たちが、チラチラと正門の脇を見ていることに気付いた。なんとなく目を向けてみると、そこには目鼻と口を押さえてうずくまっているレイの姿があった。

「……………………」
「あの子、鼻血出てない?」

 沈黙する理樹の隣で、拓斗がもう一度「ねぇ、あれってマジで鼻血じゃね?」と言った。
 転ぶかもしれないという驚きでしばしバランスを取ったポーズでいた沙羅が、ようやくといった様子で身体から緊張を解いて「鞄を置くのを忘れてた……」としょんぼりした様子で反省点を口にした。

 悶えるのではなく、下着を見せないよう止めるくらいのことはやって欲しい。

 それは鞄だけの問題ではないので、物理的に奇襲をしかけるのをやめて頂きたい。

 それぞれの女子に言いたいことが脳裏を過ぎったが、理樹はそれを口に出来るほどの精神力が残されていないと感じて、疲労感のままに目頭を押さえて深い溜息をこぼした。