すると、理樹と同じく真新しいブレザータイプの制服に身を包んだ男子生徒が、「お前、開口一番にそれかよ」と、心外だと言わんばかり眉を潜めた。

 電柱で待っていたその少年は、同じ中学出身の佐々島(ささじま)拓斗(たくと)といった。背丈は理樹と同じくらいで、相手に警戒心を持たれない呑気な表情ながら、活気溢れる瞳には悪戯好きの好奇心も覗いていた。

 拓斗とは、中学一年生の頃に同じクラスだった。出会った初日になぜか一方的に話し掛けられ、しばらくもしないうちに意気投合した。中学時代は、いつも一緒にいる組み合わせだと知られている親友同士である。

 理樹は、高校のブルーの制服に身を包んだ親友を見つめた。自分と違ってシャツの第一ボタンを外し、ネクタイは少し緩め。同じなのは、ブレザーの前ボタンをしめるのが面倒で開けているところだろうか。

 気になるのは、少し明るくなった頭髪である。先週バッティングセンターに遊びに行った時には真っ黒だった髪が、少し赤みが強い濃い茶色になっていた。