不意に、こちらに向かってきた沙羅が、肩にさげていた通学鞄の重さにバランスを取られて小さくつまずいた。丈の短いスカートが大きく揺れて、形の良い太腿の先にあるレースの入った下着がチラリと覗く。

 登校中だった周りの男子生徒たちが、小さな尻を頼りなく包んで形を浮かび上がらせる下着を見て、「えぇぇぇええええええ!?」と頬を赤らめて目を剥いた。女子生徒が「転んじゃうッ」と小さな悲鳴を上げる。

 スカートの中に気を取られる前に、近くにいる奴ッ、助けろよ!

 理樹は舌打ちすると、拓斗の胸倉を突き離して「このバカッ」と彼女に向かって手を伸ばした。その手が触れる直前、沙羅が危うい足取りながらも踏み止まったのを見て、ピタリと動きを止め、触れるまいとするように指先を握り込んで小さく安堵の息を口からこぼす。

 その様子を惚けて見ていた拓斗が、真剣な顔で顎に手をあてて、こう言った。

「なるほど、白か」
「………………」

 恐らく、それは見ていた全男子生徒の心の声だろうと思われた。