男子生徒たちが、失念していたとばかりに顔を見合わせた。彼らが「思えば確かに」「あいつもモテない組のはずだよな?」と口にすると、女子生徒たちも遅れて察した様子で、それならばどこか腑に落ちる、というような顔を沙羅へと戻した。

 しばしきょとんとしていた沙羅が、問うように拓斗を見た。

「ということは、もし私がぎゅっとしたら…………?」
「沙羅ちゃんが初めて抱擁してきた相手、ってことになるんじゃね?」

 そう答えた拓斗が、途端に面白いことを思い付いたと言わんばかりに瞳を輝かせて、「いいかい沙羅ちゃんッ」と意気揚々と人差し指を彼女につきつけた。

「つまり『ぎゅっとする』が成功したら、君は理樹のファースト・ハグを獲得したことになるわけだ!」
「私ッ、頑張ります!」

 おい拓斗、余計なことを言うな。お前、マジでシメんぞ。

 理樹は、仲良くハイタッチをする拓斗と沙羅の盛り上がりを、冷え切った眼差しで見やった。沙羅の元気な宣言を聞いて、教室の入り口で待機していたレイが、扉に手を添えたまま崩れ落ちた。

「そんなッ……ぎゅっとされるのは僕の特権だったのに!」

 レイはギリギリと歯を鳴らして、「おのれ九条理樹」と口の中で低く呟いた。


 壇上で突っ伏していた教師の鈴木が、「…………青春、してるんだねぇ……。僕は恋愛もまだなんだけど」と呟いてひっそり泣いた。