「担任の癖に、僕らの事に口を挟まないで頂きたい!」
「この前も言ったけど、君たちの担任だから言うんだよ」

 そう告げる鈴木が泣く様子を、五組の生徒たちが無言のまま励ますような眼差しを向けた。

 とはいえ五組の彼らとしては、一学年で今一番噂になっている沙羅の恋の行方に注目を置いている。鈴木からすぐに観察対象者を変えると、教室に入ってきた沙羅を見守るように視線で追いかけた。

「彼女、こっちに来るぜ。なんだか面白いことになってるなぁ」
「ぶっ飛ばすぞ拓斗」

 理樹は、前の席の親友に即答した。

 教室の出入り口に残ったレイが、扉をギリギリと握り締めながら、こちらに嫉妬百%の視線を送っていた。しかし、どこかハラハラした様子で待機しているところを見ると、沙羅の突拍子もない行動目的については知らないのだろう。

 クラスメイトの誰も動こうとはしないし、勿論、女子生徒は沙羅の味方である。
 胃を押さえてとうとう壇上に突っ伏した教師の鈴木はあてにならないので、ここは自分が動くしかない。