しかし、拓斗の申請した『読書兼相談部』の許可が下りた翌日、理樹は部活動について、当の彼女に少し面倒な突撃の仕方をされることとなった。

「九条君ッ、佐々島君と二人っきりの親密度濃厚な部活だと聞きました!」
「二人という部員数に間違いはないが、認識に大きな食い違いがあるようだな」

 それは、二時間目の歴史の授業が終わった直後のことだった。若干涙目の沙羅が、教室の扉を勢いよく開いてそう言ってきたのだ。

 歴史の担当教師は、先日に風紀委部員である青崎レイが突入してきた時と同じく、一組の担任である鈴木だ。気の弱そうな顔をした彼は、壇上からそちらへと目を向けて、今にも死にそうな乾いた笑みを浮かべた。

「君もなのか、桜羽……」

 諦めたような声で呟いた一瞬後、沙羅の後ろにレイが現れ「僕も来たぞ!」と手を挙げた。
 それを見た鈴木は、眩暈を覚えたかのように額を押さえてこう言葉を続けた。

「桜羽、青崎、お願いだから教室に戻ろう。君たち、次は確か音楽室に移動のはずだろう?」